2026-05-04

有機農業の現場管理を可視化するkintone活用術:地図と手書きで「言った・言わなかった」をなくす

羽鳥 合同会社Pons 代表
羽鳥 合同会社Pons 代表

神奈川県藤沢市役所にてkintone導入担当として数々のアプリ開発を経験後、合同会社Ponsを起業。現場目線で設計されたkintoneプラグインを提供する。cybozu オフィシャルプロダクトパートナー。

有機農業の管理は、単なる収穫記録ではありません。 「どの圃場の、どの区画で、どんな病害虫が発生したか」「どの資材が、どれだけ、いつ使われたか」を詳細に追跡し、高いトレーサビリティを維持することが、製品の品質と認証の維持に直結します。

kintoneは、この複雑な情報を「一元管理するデータベース」として非常に優れています。 しかし、現場の農作業や、圃場(ほじょう)の状況は、テキストや写真だけでは伝えきれない「空間情報」や「手書きでの記録」が大量に発生します。

「kintoneで記録はできているのに、なんだか現場の立体的な状況が伝わっていない」「写真に気づいた点に印を付けたいだけなのに、手間がかかりすぎる」と感じた経験はありませんか?

この記事では、kintoneを「単なるデータ管理ツール」から「現場の状況をすべて可視化する作業支援ツール」へと進化させる方法を解説します。

1. 「住所の文字列」から「ピンの確実な場所」へ:圃場管理とルート最適化

農業の管理は、広い土地を巡る作業が中心です。 過去の記録を振り返る際、「〇〇区画」という文字列だけでは、作業員や管理者が現場で正確な場所を思い出すのは困難です。

「この記録は、あの畑の南東の角の件だ」と、指差しで示す方が圧倒的に早い。 また、複数の圃場を巡る場合、毎回Googleマップを別で開いて、訪問順序を考える作業は大きなロスです。

この課題を解決するには、kintoneのレコード情報に「地図の座標」を付与し、視覚的に場所を特定できる仕組みが必要です。

専用のプラグインを導入することで、記録された住所や座標を地図上にピンで展開できます。 さらに、複数の圃場を巡る際、レコードをタップするだけで地図上に複数のマーカーが同時に表示されます。 どの圃場が「病害虫発生エリア(赤)」なのか、「追肥が必要なエリア(青)」なのか、ステータスに応じて色分けが可能です。

複数マーカーアイコン:作業エリアの状況が一目でわかるため、効率的な巡回ルートの計画が立てられる

単に場所を記録するだけでなく、マーカーをタップするだけで、その圃場へのルート案内をGoogleマップに飛ばせるようになります。現場での「今、どこにいるか」「次に行くべき場所はどこか」という迷いを徹底的に減らしてくれるのが最大のメリットです。

Googleマップへのルート検索画面:ピンが示す場所から次の作業エリアへの移動ルートがすぐにわかる

2. 「気づいた点」を写真に書き込む:現場監査と記録の高度化

有機農法での監査や、病害虫の発見記録は、写真と密接に関わります。 「この写真の、この部分にカビが発生している」「この図面だと、この配管の横にゴミが溜まっている」といった、写真上の特定のポイントに気づきやコメントを付加したい状況は日常茶飯事です。

しかし、標準のkintoneの添付ファイル機能では、写真をただ貼り付けるだけです。気づきを記録するには、写真をダウンロードし、別の画像編集ツール(Photoshopなど)で書き込み、再度アップロードするという、手間のかかる工程が発生してしまいます。

必要なのは、その場で、その写真の上に、手書きで「印」や「矢印」を書き込む機能です。

手書きメモ・署名機能を持つプラグインを導入することで、このプロセスが劇的に変わります。 スマートフォンやタブレットから現場で撮影した写真に、その場で手書きの注釈や円、矢印を描き込むことができます。

現場写真への手書き書き込み:写真の特定の箇所に手書きで印や矢印を書き込むことで、気づいた点や問題箇所が明確になる

さらに、誰が、いつ、何の書類にサインしたかという「同意書や承認フロー」の記録にも役立ちます。 認証プロセスや、資材の受け入れ確認など、サインが必要な場面での電子署名も、この機能で完結します。

白紙への電子署名:資材の受け入れや作業完了報告など、紙のサインが必要なプロセスを電子データで完結できる

3. 圃場全体を俯瞰する:空間データによる課題の集計

個別の圃場管理や、写真への書き込みで記録はできるものの、「エリア全体でどんな傾向があるのか」という俯瞰的な分析は難しいのが実情です。

例えば、「この地域全体で、最もカビの発生報告が多いのは、どの緯度経度の範囲か?」という問いに答えるためには、単なる件数集計だけでは不十分です。

この課題を解決するのが、空間統計学的な視点を取り入れた集計機能です。

複数の圃場から集められた病害虫の報告件数、または資材の使用量が、都道府県や市区町村、あるいは農園ごとのエリア単位でどれだけ発生しているかを、地図上に色分けして可視化できます。

これをコロプレス地図(地域ごとに色分けされた地図)として一画面に表示できるため、経営層やチームリーダーが「全体のリスクマップ」として利用できます。 どのエリアにリソースを集中させるべきか、あるいはどの資材の需要が集中しているかを、直感的に把握できるようになるのです。

都道府県別集計マップ:エリアごとの問題件数や需要の偏りが色で表現され、どこに注力すべきか一目でわかる

導入のハードルを下げる「事実ベース」の強み

ここまでシステムを強化していくと、「クラウドサービスを契約し、複雑なデータ連携が必要なのでは?」と感じるかもしれません。

しかし、今回ご紹介した機能は、すべて「単体で必要な機能」として提供されています。

  • 手軽さ: 特別な開発や複雑なデータ連携は不要です。
  • 安心感: 必要な機能だけを組み合わせて利用できるため、費用対効果を最適化できます。
  • 万全のサポート: 導入後の運用に関するサポートも充実しているため、現場への定着がしやすい設計です。

「現場で必要な機能」を「必要な時に、必要なだけ」導入できる点が、最大のメリットです。

「まずは、地図機能の追加から」「病害マップを作ってみたい」といった、小さなステップから始められるため、リスクを最小限に抑えながら、システムを育てていけるのが理想的な形です。

現場の運用フローをそのままデジタルに落とし込む形で、段階的に「理想の管理システム」へと進化させることが可能です。

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